10年前の、母の声

母の旧友であるという方が、我が家にお参りに来られた。母が亡くなったことを知らずにいたのだが、うちに「近々熊本にいくから、お母さんに会えるかなと思って」と電話があったので、母の訃報を伝えたところ、たいへん驚き、本日の訪問となった。

よもやま話のなかで、私はその肩に「母はどういう人でしたか」と尋ねてみた。すると、即座に「まっすぐな人」という答えが返って来た。

「10年前にお会いした時、会話を録音していたから、それをあげましょう」

SDカードでWAVデータを手渡されたが、一瞬、これを聞いてよいかどうか躊躇った。まだ彼女の声を聞くのは早過ぎないかと思ったが、不安より好奇心が勝ったので、聞いてみることにした。

再生してみたら、なんてことはない。記憶のなかにある彼女のまま、好きなことを好きなように話していた。話の中には、私のことや孫のことなども出て来て、相変わらずの毒舌ぶり!「またこんな勝手なこといって」と少し腹立たしく思うシーンもあったほど。しんみりする暇もなく、1時間のおしゃべりは終わった。これこそ母らしい。