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脳と自分

脳の働きのことを「自分」だと思っていた。脳の働きとは、「今日はこれをやろう」とか、「この問題はこうやって解決しよう」とか、「あの人は私をどう思っているのだろうか」とか、「私はどうすれば幸せになれるんだろうか」ということを考えること。それを、「私が考えている」と思っていた。

しかし、この「脳の働き」は自分ではない。脳の働きとは、取り込んだ情報を分析し、データベースを構築し、そこからあらゆることを判断、決定し、その結果を元に次の動きを指示するというもの。一番近いのは、最近話題になっている人工知能だ。考えて、判断して、体を動かす。言わば、コントローラのようなものなのだ。

つまりそれは、胃や腸などの臓器の働きと同じで、命をつなぐために体を動かす指示をするという、体の中のひとつの役割。胃や腸が食べ物を消化したり、心臓が血液を身体中に送り込んだりするのと同じように、手や足を動かすための指示をしているものなのだ。

その指示系統である脳を、まるで自分自身のように勘違いしていたが、そうではない。自分自身は、もっと別のところで、別のことを考えている。あるいは、息を潜めて自分の脳の動きを見つめている。それは、ゲームをしている自分自身を忘れて、ゲーム画面に映っているキャラクターを自分だと思い込むのによく似ている。この場合、コントローラが脳で、ゲームのキャラクターが自分の体だ。しかし、そこに自分自身はいない。コントローラをもって画面を見ているその人こそが、自分自身なのだ。

なかには、この脳の働きを「エゴ」と呼び、エゴを捨てる方法を探す人もいるが、脳の働きを捨てる必要はない。ただ、「脳は自分ではない」と知るだけで十分なのだ。